電子書籍の枠を超えた!全国の印刷会社が集う「ジャパンイーブックス」
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これまで、当ブログでも何度かご紹介したことのある、「ジャパンイーブックス」。日本の各都道府県で、地元自治体の広報や観光パンフなどを電子書籍化して無料公開している地域特化型ポータルサイトのサークルです。先日、全国各地の運営会社が一同に会する「情報交換会」が東京で開かれ、筆者も参加してきましたが、その活動はもはや単なる印刷物の電子化にとどまらないものでしたので、まとめてみました。
ジャパンイーブックスのサークルメンバーとして、各都道府県で「イーブックス」のサイトを運営するのは、それぞれの地域の印刷会社です。
始まりは2012年に宮崎県でオープンした「宮崎イーブックス」で、その後各都道府県でサイトが立ち上がり、2015年9月現在、全国で21のイーブックスが運営されています。
■地域の広報や観光パンフなどを電子書籍で無料公開
イーブックスの主要コンテンツの一つは、各地の自治体や観光協会などで発行している観光案内です。
写真は「奈良イーブックス」で公開されている観光イベント冊子。情報の充実した観光パンフやガイド冊子は、観光客にとって便利なものですが、従来では地元の駅や観光案内所、公共施設など、限られた場所でしか手に入りませんでした。
こうして、PCやスマートフォンで観光案内を見ることができれば、旅行に出発する前から情報をチェックできるので、旅行者にとってのメリットは大きいですね。
もう一つの主要コンテンツが、自治体の広報です。生活に関わる大切な情報が載っている広報がPCやスマートフォンなどで読めるのは、住民にとっての大きなメリットといえるでしょう。
写真は「宮城イーブックス」で公開されている、気仙沼市の広報です。震災からの復興に向かう地域では特に、自治体から発信される情報をチェックすることが重要な意味を持っているはずです。
これだけでも、電子カタログの仕組みを使ったサービスとしては十分有意義と思うのですが、さらに、情報サイトとしての価値を高める活動も。
「山口イーブックス」で閲覧できる、温泉の特集ページです。観光の他にも、グルメ、教育、スポーツなど、利用者のニーズにあわせて情報を編集し、利便性を高めているのが特徴です。
また、サイト独自のオリジナルコンテンツもさかんに作られています。
大分イーブックスの『Yo-ho(ヤッホー)大分版』。地元の山の魅力を伝える登山誌で、独自取材でクオリティの高い誌面になっています。最初は宮崎イーブックスで発行されていましたが、大分など他地域でも展開。オリジナルの登山誌ブランドへと発展しつつあります。
一方、「山形イーブックス」では、ドローンを使った空撮で地元の風景を紹介する動画コンテンツを展開しています(動画はこちら)。
このように、「イーブックス(ebooks)」と名乗ってはいても、現在は電子書籍の枠にとどまらず、「その地域のことを知りたい」というニーズに応える情報サイトを目指しているといっていいでしょう。
■各地のイーブックスが協力し、お互いを高め合う
先日、各地のイーブックスを運営する印刷会社が集まる「情報交換会」が東京都内で開かれました。
ジャパンイーブックス事務局が参加メンバーの活動支援の一環として実施しているもので、各地の活動報告や情報提供、テーマごとに分かれたグループディスカッションなどを実施し、お互いのノウハウや経験を共有して、各自のイーブックスの運営や新しいビジネス開拓などに役立てていこうというものです。
そもそも、地域のコンテンツを全て無料で公開しているイーブックスは、それ単体では大きな収益をあげることが難しいのですが、イーブックスの活動を通じて自治体や地域の企業・団体などとの関係を深め、印刷やWeb制作などの受注につなげることで、地元企業としての価値を高めていく…といったビジネスモデルになっています。
例えば、宮崎イーブックスでは、宮崎市の広報誌『市広報みやざき』の制作を受注し、単に広報を電子化するだけでなく、その誌面の企画段階から関わることに。
さらに、自治体の過去の広報誌や資料などを電子化して保存・公開するデジタルアーカイブの制作を、宮崎県内の複数の市町村で受注しています。写真は「椎葉村アーカイブス」。
佐賀イーブックスは、県内のJAと契約し、「JAさが」の特設サイトをオープン。イーブックスを通じてビジネスチャンスを広げている実例の一つといえます。
情報交換会では、クライアントへの企画提案のなかで得られた「気づき」や、失敗から学んだ教訓など、さまざまな経験が紹介されていましたが、それぞれの印刷会社が、印刷物の電子化(イーブックスへの掲載)にとどまらず、動画の撮影・編集や効果的なキャンペーンサイトの制作など、より幅広い需要に応えなければならなくなっている現状がよく分かりました。
そんななかで、ジャパンイーブックスが情報交換のハブとなって、他県のイーブックスからの協力で技術的アップデートを実施したり、他県に学んだノウハウを商談に活かして受注を獲得したりと、数多くの成果が生まれています。
このように、本来は競争相手であるはずの印刷会社どうしが、お互いの経験やノウハウを明かして協力するというのは、稀有なケースではないでしょうか?
イーブックスの運営主体は「各都道府県に1社」が原則ですので、お互いの商圏が重複することはなく、むしろ同じ志をもつ仲間として資産を共有し、お互いを高め合うことができるわけです。
■地域の印刷会社が発信する「全国ブランド」へ
そして、9月29日に2015年グッドデザイン賞が発表され、受賞作品の一つに、秋田県の「秋田イーブックス」が選ばれました。
審査委員からは、「秋田県内の広報誌をすべて電子化するというチャレンジ精神が素晴らしい。色、キャラクター、デザインコンセプトから地元への愛を感じ、秋田県内すべての自治体と契約締結する努力から地域活性化への意気込みを感じる」と高く評価されました。
この出来事によって、地元・秋田のイーブックスだけでなく、ジャパンイーブックスに加盟する各地のサイトにも注目が集まるはずです。ジャパンイーブックスはこれから、地域の印刷会社発の「全国ブランド」として発展していきそうな可能性が感じられますね。
ジャパンイーブックスは現在のところ、全国21カ所でサイトが展開中です。電子カタログの活用でここまで大規模のケースは多くありません。公式サイトでは、各地のイーブックスの情報やニュースなどがチェックできますので、皆さんもぜひチェックしていただければと思います。
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