デジタル冊子で地域貢献を目指す!「茨城イーブックス」を訪問してきました
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これまで、当ブログでたびたび取り上げてきた、地域特化型電子書籍ポータルサイトの「ジャパンイーブックス」。デジタルカタログの仕組みを地域の情報発信に活かしたサービスで、現在22の都道府県で「◯◯イーブックス」が活動しています。今回、その一つである「茨城イーブックス」の運営チームを訪ねて、お話を聞きました。
(出典:http://www.ibaraki-ebooks.jp/ 以下、引用コンテンツは全て茨城イーブックスから)
茨城イーブックスは2014年3月に正式オープン。各自治体の広報誌や観光案内、イベント情報、学校・施設案内など、茨城県内のさまざまな印刷物をPC・スマートフォン・タブレットで無料閲覧できます。県民・市民にとって必要な情報はもちろんのこと、県外から観光や出張で来る人にとっても便利な情報が満載です。
この茨城イーブックスを運営しているのは、水戸市の印刷会社「光和印刷」さん。今回は、運営チームの中心を担う、宮角貴裕さん、石川貴洋さんにお話を聞きました。
■地域に貢献する事業に、活き活きと取り組む姿勢に共感
茨城イーブックス設立の最初のきっかけを、宮角さんは次のように話します。
「私たちの会社はこれまで、チラシ・パンフレット・ポスターなどの商業印刷が主力事業でしたが、近年、商業印刷の需要が減り続けていて、危機感を覚えていました。『もっと積極的に企画提案をやらなければ』と、新しいビジネスを模索していた頃、東京国際電子出版EXPOで宮崎イーブックスさんと出会い、『ジャパンイーブックス』の構想を知ったのです」
その後、宮角さんらは、ジャパンイーブックスの事務局であり、宮崎イーブックスの運営会社でもある宮崎南印刷さんを訪れて交流を深めるなかで、茨城でのイーブックス設立を決意したといいます。
「宮崎南印刷さんは、ちょうど私たちの会社と同じくらいの規模の印刷会社なのですが、印刷物の電子化を通じて地域に貢献する姿勢に深く共感しましたし、何より、スタッフの皆さんが活き活きと楽しみながらイーブックスの仕事をしているのを見て、『中小企業でもこんなことができるんだ!』と、勇気をもらいました。私たちも『事業を通じて社会に貢献する』ことを社是としていましたので、ぜひイーブックスに挑戦したいと思いました」
そうして、茨城イーブックスが2014年初めにオープン。サイトのシンボルマークは、つくば市にあるJAXA(宇宙航空研究開発機構)の宇宙探査機をモチーフにし、サイトの配色は水戸の名所・偕楽園の梅をイメージしました。
■初の試み、県内44の全自治体を訪問
まず最初に取り組んだのは、県内全市町村の広報を掲載すること。「茨城の全てを電子書籍で読める」サイトを目指すうえで、重要な課題でした。
「2回にわたって、県内全ての自治体を訪ねて回ったのです。初めて訪れる市町村も少なくなかったですね。自治体の反応も様々で、デジタルメディアに明るく積極的に協力してくれたところや、このようなコンテンツになかなか理解を得られなかったところ、興味はあるが事情により見送りとなってしまったところもありました」と、石川さんは振り返ります。
そんな苦労を重ねながら、2年かけて44市町村のうち39の自治体の広報を掲載できるように。
「今思うと、水戸市、土浦市、つくば市など、比較的初期にエリアの中核となる 自治体が参加してくれたことが大きかったかも知れません。そのおかげで、しばらく様子を見ていた自治体が参加しやすくなったのかなと思います。一度は断られてしまった自治体からも、あとから掲載許可の連絡が入ったときは、 とても嬉しかったですね」
茨城イーブックスのサイトで広報誌や観光パンフが充実する一方、一つのテーマでコンテンツをまとめた特設ページにも力を入れるようになりました。
県内の高校・大学などのパンフレットがまとめて読める「大学・専門学校ebooks」「ハイスクールebooks」、県外からの来場者も多い「アクアワールド大洗」特集ページ、大子、大洗、五霞など地域別の特集ページといった、より便利にコンテンツを利用できる工夫を行いました。
「ハイスクールebooksは、高校入試の合格発表の時期に多くのアクセスがありましたし、昨年の常総市の水害では、常総市のハザードマップにアクセスが集中したこともあり、地域のニーズを実感しました」
災害などの緊急時には、自治体のサイトにアクセスが集中して閲覧しづらくなるケースもあるため、茨城イーブックスが防災の点でも重要な役割を担う可能性がありそうですね。
■「イーブックス」を通じて学んだこととは?
宮角さん、石川さんらは、さらに茨城のことを知りたいニーズに応えるために、オリジナルコンテンツにも取り組むことに。オリジナルキャラクターを使った子供向けコンテンツや、独自に取材した観光案内のほか、常陸太田観光果樹園の案内パンフに、生産者インタビューなどの動画を加えた特集ページも制作しました。
「それまで映像制作のノウハウが少なかったので、ぶどう園の取材は、想定外のハプニングもあり大変でした。しかし、そうしたチャレンジが自信につながり、今までなら尻込みしていた「パンフレット+動画制作」のようなコンペにも積極的に応募し、受注につなげることができました。『やったことがない案件にも挑戦する』という意識が社内に芽生えたことは、イーブックスの大きな収穫だと思います」と宮角さんは話します。
■夢は「独自イベントの開催」。県内のいろんな方とコラボしたい
茨城イーブックスは閲覧無料、掲載も無料で運営しているため、それ単体では収益を生まないビジネスモデルです。それでも、各地の自治体を訪問したり、コンテンツづくりの経験を重ねるなかで、新たな人とのつながりが生まれ、発見や学びも多く得られたことで、宮角さんらは確かな手応えを感じています。
「茨城イーブックスを始めてから、地元で生まれ育った私たちこそ、茨城の情報や魅力をもっと知って、発信していかなければと痛感しましたし、デジタルメディアにとても詳しく、積極的な自治体も少なくありません。印刷会社としての未来を切り拓くために、私たち自身がもっと色々なことを学び、成長していくことが大切だと感じています」と宮角さんは強調します。
宮角さんらは引き続き、茨城県の全自治体のコンテンツ掲載を目指しつつ、今後は県内のさまざまな人びととのコラボレーションを行いたい考えです。
「茨城県北ジオパークの運営に携わる、茨城大学の先生とお会いしたことがきっかけで、ガイドマップや解説冊子などを『茨城県北ジオパークebooks』として掲載することができました。これからも、県内の学校・学生や民間とのコラボレーションを通じて、茨城県の魅力をさらに掘り起こしていきたい。そうやって地域発のメディアとして成長し、将来的には茨城イーブックスとして県のイベントを企画するのが夢なんです」
今回の取材を通して、茨城イーブックスはデジタルカタログの仕組みをビジネスチャンスに活かすだけでなく、自分たち自身の成長につなげている点が素晴らしいと感じました。宮角さん、石川さんが熱く語ってくれた、茨城イーブックスの展望に期待せずにいられません。
現在も、茨城イーブックスには新しいコンテンツが続々と追加されています。
ちょうど今、桜開花のシーズンを迎えた茨城は、見どころがいっぱい。茨城イーブックスをブックマークするか、スマホ閲覧用アプリをダウンロードして、ぜひお出かけしてみて下さい!
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