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割れた器も魅力的に復活!「金継ぎ」修理で大事な食器をいつまでも

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思い入れのある大切な器を不注意で割ってしまうと、なかなかすぐにあきらめて捨てる気になれないですが、アロンアルファなどでくっつけるのも現実的ではなく、絶望的な気持ちになりますよね(筆者もその1人でした)。でも、あきらめるのはまだ早いですよ。日本古来の伝統技法「金継ぎ」で、魅力的な器となって復活させられる可能性があるのです。実際に割れた器を修理した筆者の体験をもとに、金継ぎの魅力をご紹介したいと思います。

やってしまいました…


ことの始まりは、筆者が昨年の沖縄旅行で見つけて購入した「やちむん」のお皿を割ってしまったことでした。

大切な食器も、使わないでしまっておくのはもったいないので、いろんな料理に使っていたのですが、洗う時は他の食器と別にして、慎重に取り扱うべきでした。

何気なく台所のシンクに置きっぱなしにしていたところへ、食器カゴから落ちてきた別の食器が命中。写真のように大きく欠けてしまいました。

「あーあ…」

家族にも怒られ、思い出の品がだめになった喪失感で凹んでしまいました。


このお皿は沖縄・読谷村の「やちむんの里」で見つけたもので、それほど高価な品物ではないのですが、通販をやっていないお店でしたので、買い直すためには沖縄にいってレンタカーまで手配しないといけない。現実的に、すぐに新しいお皿を買い直すのは難しいのでした。


どんな料理をよそっても魅力的に見えて、味わいのある絵柄と心地よい手触りでたいへん気に入っていました。
大事な器だからこそ、特別に慎重な扱いを心がけておくべきだったと、後悔が尽きません。

ただ、欠けてしまった部分はきれいな三角形に切れていて、粉々になってしまった部分はなさそう。専門の業者に頼めば直してくれるかも? と思って調べてみたところ、「金継ぎ」という技法で修理してくれるところがあると分かりました。

職人による「金継ぎ」をしてくれるお店を探す

「金継ぎ」とは日本古来の伝統技法で、器の割れた部分を漆(うるし)でつなぎ、金や銀で装飾するものです。

金継ぎはとりわけ「器(うつわ)」を大切に扱ってきた茶道文化のなかで行われていたといわれており、割れてしまった貴重な器を修復し、その修理跡も金で美しく仕上げて新しい模様にしてしまうという独特の美意識が注目を集めています。


「金継ぎ」をインターネットで調べると、いろんな業者やお店が対応してくれているのがわかるのですが、近いところでやっているお店を見つけました。
小古道具屋 四歩(しっぽ)」さんです。

JR三鷹駅の近くにお店を構え、台所関連を中心とした生活の道具類を販売しつつ、身体にやさしいメニューをそろえたカフェを経営。家具修理サービスの一環として、職人による「金継ぎ」の修理を受け付けています(2018年1月、記事執筆時点ではお店の移転準備のため休止中)。

しかも、修理費用の目安はなんと500円からと、かなり良心的な価格です。
こちらのお店の金継ぎは、本物の漆や金の代わりに合成漆と真鍮を使うことで費用と修復期間が少なく済むようにしているそうです。骨董的価値よりも実用を重視した修理方法といえるでしょう。

事前にメールで問い合わせをしてみたところ、注文が殺到しているようで、完成には4カ月以上かかるとのこと。それでもやちむんが直るのであればと、お店に現物を持ち込みました。


「いったんお預かりして、お見積を出させていただきます」とのこと。
また、接着後の仕上げの色に「金」か「銀」のどちらかを選ぶことができるそうです。今回は絵柄に合いそうな「金」でお願いしました。

1週間ほど待って連絡があり、見積金額は2,500円に。
切り口は綺麗に欠けていて、なくなった部品も特にないのですが、よく見ると細かいヒビが中の方まで達していたようで、この金額になりました。
それでも、きれいに直って器が使えるようになるのであれば、再び沖縄に同じものを買いに行くよりは安上がり。「ぜひお願いします」とお伝えして待つことにしました。

まるで新しい器に生まれ変わったかのよう

そして4カ月後。
お店から「完成しました」と連絡があり、再び四歩さんに伺いました。


修理の出来上がった器がこちら。
梱包を解いてみると…


きれいに直っています!


(↑修理前の状態)

壊れた状態と比較すると、本当に「元通りになった」としか思えない印象ですが、顔を近づけて見てみると、

割れ目に沿って金色の線が入っているのですが、それが不思議と器の雰囲気に馴染んでいて、あまり違和感がありません。


裏返して見てみても、自然に出来上がった模様のように見えます。この金色は時間が経つにつれてくすんでいってしまうので、このような輝きを楽しめるのは修理したての頃だけのようです。

元通りに使えるようになった器ですが、注意すべき点もあって、電子レンジや食洗機には使えません。直射日光や長時間の浸水、急激な温度変化もNGとのこと。一度割れてしまった器ですから、保管する時も洗う時も、やさしく扱ってあげるようにしましょう。

※四歩さんは3月に吉祥寺に移転することが決まっていて、現在の場所での営業は2018年2月25日までとなります。金継ぎの受付もしばらく中止していますが、「移転後落ち着いたら再開します」とのこと。
器の修理を依頼したい方は、いきなりお店に行くのではなく、事前にメールなどで問い合わせてから出かけるようにして下さいね。

自分でも「金継ぎ」ができる?

今回はお店を通して職人の方にお願いしましたが、自分でも「金継ぎ」はできるのです。
便利な「金継ぎキット」も通販で買えるようになっています。


東急ハンズ 金継初心者セット(出典:Amazon.co.jp)

ただ、職人の技をいきなり自力で再現するのには不安があると思います。
お店や職人の方が全国各地で「金継ぎ」のワークショップを開催していますので、そうした場に参加して、作業のコツを学び、金継ぎの伝統技術に触れながら楽しむのもおすすめです。

このように、金継ぎは日本の伝統技術でありながら、最近では気軽に身近に触れることができるようになっています。
大切な器を不注意で割ってしまった方は、新たな魅力をもった器によみがえらせる伝統技能をぜひ一度体験していただければと思います!


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佐藤勝

佐藤 勝Writer

ライター/編集者/何でも屋。Web、デザイン、映像、アート、観光などの記事執筆や、企業・団体のコンテンツ制作など、色々やらせていただいております。 INSPIでは、生活やビジネスに役立つものづくりの情報から、面白スポットやまちづくりまで、さまざまなテーマの記事をお届けします。
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