北国版の「たてもの園」!歴史建築を体験できる「北海道開拓の村」
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以前の記事で、東京の歴史的な建造物をリアルに体験できる「江戸東京たてもの園」をご紹介しましたが、北海道にも、札幌の郊外に明治、大正、昭和の歴史を残す「北海道開拓の村」というスポットがあると聞き、訪問してきました。北国版「たてもの園」とった感じの展示がとても魅力的でしたので、ご紹介します。
北海道開拓の村は、JR札幌駅付近から車で40分の郊外にある展示施設です(公共交通機関では、地下鉄新さっぽろ駅からバス15分)。明治期から昭和初期にかけて建てられた北海道各地の建造物を移築し、屋外展示したものです。
入場受付のあるこの建物は、旧札幌停車場の駅舎。長い歴史をもつ札幌駅ですが、このデザインは1908年に建造された3代目の駅舎を再現したものです。待合室のノスタルジーを感じさせる雰囲気がいいですね。
村内に足を踏み入れると、こんな景色が広がります。広大な面積なので、村内を運行している馬車鉄道を利用して移動することもできます。
(雪の積もる時期は、馬そりが運行されるとのこと)
こちらは、旧浦河支庁庁舎。浦河支庁は、現在の日高振興局のルーツにあたりますね。1919年の建造で、役所として使われていただけあって、かなりしっかりした造りの洋風建築です。中に入って見学することもできます。
中に入って気になったのが、部屋と廊下を仕切るこの部分。
大正~昭初期に建てられた庁舎や学校などで見ることができます。筆者が子どもの頃に通っていた小学校はこんな窓のある教室でしたので、なんだか懐かしくなりました。
この、階段の手すりの意匠もかなり凝っていて素敵ですね。
細部までこだわって作られた建築が、100年近くを経て色あせながらも磨かれた状態で見られるのは、移築保存展示ならではの魅力だと思います。
その旧浦河支庁庁舎の向かい側に建つのは、旭川市にあった旧来正(くるまさ)旅館。1919年に宗谷本線・永山駅前に建てられたもので、馬車や鉄道の待合所と宿泊施設を兼ねていました。
1階に入ってすぐのところが待合室。ここで休憩をとりながら列車や馬車を待つ人びとで賑わったそうです。
2階の客間はこんな感じ。大正・昭和の旅人たちの足跡を見るようで、想像力をかきたてられます。
かつては小樽運河のそばに建っていたという、旧小樽新聞社の建物です。明治期の1894に建てられたもので、外観は石造りですが、骨組みは木造だそうです。
内部ももちろん見学できます。古い海外製の印刷機や活字の数々に目を奪われました。明治期に発行された新聞のコピーも見ることができるのですが、当時の小樽は北国でも有数の金融都市。経済記事や広告がとても充実しています。この新聞をじっくり見てもなかなか面白そうです。
こちらのかわいいデザインの建物は、札幌の北海道神宮の近くにあった、旧山本理髪店です。大正期に建てられた洋風建築で、当時は床屋さんらしくハイカラな建物でご近所の注目を集めていたのかも知れません。
中に入ると、お客さんとご主人の会話を音声つきで再現した展示が見られます。
古い教会の建物もあります。1894年に建てられた、旧浦河公会会堂です。神戸で設立され、北海道に入植した「赤心社」の移民のための礼拝・集会所として使われていました。
明治期に北海道各地に入植した団体のなかには、キリスト教徒も少なくなかったそうです。厳しい開拓の生活のなかで、こうした教会が人びとの心のよりどころになったことが想像できます。
どんどん見ていきましょう。こちらは、旧札幌警察署南一条巡査派出所。現在の札幌テレビ塔にほど近い、創生橋のそばに建っていたそうで、1911年に建てられたレンガ建築です。
中に入ると、白い制服を着たおまわりさんの人形といきなり目が合って、びっくりしてしまいます。
ここまでご紹介してきたものはほんの一部で、まだまだたくさんの建物があります。しかも、ここまで見てきた「市街地群」の他に、「漁村群」「農村群」「山村群」と、それぞれのエリアが広がっています。全部見ようと思うと、まる1日かかりそうですね。
とりあえず、漁村エリアで一番立派な建物に入ってみましょう。旧青山家漁家住宅。かつて北海道の日本海側沿岸で栄えた、ニシン漁の従事者が暮らした建物で、ドラマ「マッサン」のロケ地にもなったそうです。
北海道開拓の村では、村内の各所でボランティアの方が案内や説明をしてくれたり、電灯遊具づくりの体験など、さまざまなイベントが開かれています。
筆者が訪れたこの日は11月下旬で、最高気温5度と、冷たい風の吹く日でしたが、この旧青山家漁家住宅では火のついた囲炉裏(いろり)を囲んで、ボランティアの方がいれてくれた温かいお茶をいただきました。
ニシン漁が全盛だった頃は、全国から労働者が集まり、集団で寝泊まりしながら働いていたそうです。窓際の寝床はとても寒そうだなぁ…と思っていたら、「当時は労働者のなかでも地位の高い船頭クラスの人だけが、囲炉裏の火にあたることができたんだよ」と、年配のボランティアの方が教えてくれました。
漁村群エリアに広がる大きな池を回り込んで進んでいくと、農村群エリアに続いていきます。あまりに見どころが多くて、今回の訪問では全ての建物を見ることができませんでした。
北海道開拓の村は、道内で生まれ育った人なら、学校の遠足で一度は訪れたことのあるスポットかも知れませんが、道外や海外の観光客が訪れても、北海道の歩んできた歴史を肌で感じられる場所としておすすめです。
特に、北海道開拓の歴史は、全国各地からの入植者が切り開いてきた側面があります。筆者の場合、母方の実家が北海道にあるのですが、5年くらい前に親戚に聞いた話によると、その実家のルーツは富山県なのだと、初めて知りました。
(改めてその街の地図を見ると、中部地方にある地名と同じ名称の町名があったりして、その地域からの入植者があったことが想像できます)
もしかすると、あなたの住んでいる土地の祖先にゆかりのある建物が、この北海道開拓の村で見つかるかも知れませんね。
めったに北海道に行けないという方には、Googleストリートビューで北海道開拓の村を見て歩くことができます。こちらも参考にしてみて下さい。
北海道開拓の村は、寒さの厳しい冬でも楽しんでもらえるよう、餅つき・クリスマスイベント(2015年12月23日)や、とんど焼き・鏡開き(2016年1月11日)など、イベントやワークショップが企画されています。北海道の歴史や建築デザインに興味のある方におすすめのスポットです。
冬場に札幌を訪れるなら、12月25日まで大通公園で「開催されているさっぽろホワイトイルミネーション」もおすすめです。いずれも、防寒対策をしっかり行って、お出かけいただければと思います!
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