国際電子出版EXPOに行ってきました(本日まで開催中)
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7月3日(水)から5日(金)まで、東京ビッグサイトで開催されている「第17回国際電子出版EXPO」に行ってきました。
展示ブースはたくさんあって、全てのブースでお話を聞くことはできなかったのですが、中小事業者や個人のクリエイターの方でも利用できそうなものに絞って、面白そうなサービスをご紹介したいと思います。
まずは、大きめのブースからチェック。電子書籍ビューア開発の老舗・ボイジャーのブースでは、午前中から夕方まで隙間なくトークセッションを開催中。同社は専用端末やアプリ不要で、ブラウザで電子書籍が読める「BinB」というシステムで注目を集めていますが、今回は電子書籍の新たな世界標準フォーマット「EPUB3」形式のデータを簡単に作成できる「EPUB3メーカー」を出品しています。
Webブラウザ上の操作で電子書籍データを作成・プレビュー確認し、完成データをダウンロードする際に課金(年間5万円+1コンテンツあたり400円)される仕組みです。AmazonのKindleストア、アップルのiBookstore、楽天のKoboなどでの販売に最適なデータを効率良く作成できるのが利点で、当面は企業向けのみの販売だそうです。
次はモリサワのブース。フォントメーカーとして知られるモリサワですが、電子書籍向けの組版ソフトをはじめ、電子雑誌制作、電子コミック制作などさまざまなツールを開発・提供しています。
今回見せてもらったのは、電子コミック制作ソリューション「MC Comic」。画像やPDFなどのデータから、簡単操作で電子コミックを作成し、EPUB3形式、あるいは著作権保護機能つきEPUBデータを書き出すことができるもの。近日追加される予定の「コマ割り検出機能」では、かつてのケータイコミックのように1コマずつ表示させるようなデータを一瞬で作成できます。「MC Comic」の価格は年間12万6000円。出版社など企業での利用を想定しています。
また、個人ユース向けの製品も見て来ました。ちょっと面白いなと思ったのが、写真集や雑誌、パンフレットのようなビジュアル重視の電子書籍(EPUB3形式)をブラウザ上で作成できる「Tigris+」です。ブラウザ上のエディタで写真やテキスト、動画などをレイアウトし、作成した電子書籍は同社サイトで販売するほか、作成したデータをダウンロードして、自分で公開したり、他のストア向けに作り変えることも可能です。
こうした固定レイアウトの電子書籍をEPUBで作成するためには、ある程度コーディングの知識とスキルが必要になるのですが、このサービスはそうした知識が全くなくても、凝ったレイアウトができてしまう点が大きいです。同社サイトで販売するなら、無料で始められるそうですので、個人でも気軽に利用できそうです。
もう一つ、ブラウザ上でコンテンツを作成できるサービスをご紹介。こちらは、電子書籍とオンデマンド印刷の両方で出版できる「自費出版の森」。日宝綜合製本という岡山の製本業者さんが開発したサービスなのですが、「自分史」などで自費出版をしたい、といった方によく利用されているそうです。入会費3000円+1冊あたり4万円で、自分の本が作成・販売できて、紙の本が売れた時にはオンデマンド印刷+ハードカバー製本で発送までやってくれるといいます。
「売れる売れないにかかわらず、自分の本ができるというだけで、すごく喜んでいただける方が多いんです」と、スタッフの方は話します。ただ、中高年層のユーザーが多いためか、「電話などのサポートはなかなか大変です(笑)」とのこと。しかし、本が完成しただけでも喜ばれるというのはなかなか心あたたまる話だなーと思います。
展示全体を見て思ったのは、最新の国際標準フォーマット「EPUB3」を採用した制作ツールや販売システムが次々と登場し、業界標準を意識した電子書籍の制作や電子出版ビジネスがいよいよ広がっていくのかなー、という印象でした。
ただ、「電子書籍作れます」「売れます」といったサービスがたくさん出てくる一方で、作った電子書籍を「誰に届けるのか?」「どうやってプロモーションするのか?」「集客力のある電子出版の企画はどうやってできるのか?」といった課題に対応する有力な提案は、あまり見られませんでした。「作る」環境が整ってきたからこそ、これからはそちらの部分が大事になってくるのではないかな?と個人的に思いました。
ともあれ、本日の7月5日(金)まで開催中ですので、お時間がありましたらぜひ足を運んでみていただければと思います。
会場では他にも、オンデマンド印刷の普及を目指す団体「社団法人PODi」と学生のコラボレーションや、地域の情報を電子書籍で発信している、「ミヤザキイーブックス」(宮崎南印刷)のブースの方々とお話させていただきました。
特にこの「ミヤザキイーブックス」は一定の成功を収め、同様のモデルが日本各地に広がっています。地方の印刷会社にとって大きな可能性のあるビジネスモデルと思いますので、回を改めて取り上げたいと思っています。
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